この怪物がインパクトを残したのは「ガー助」というどこか間の抜けたネーミングセンスと掲載された書籍に載っていた「怪物の写真」でした。湖面を悠々と歩く「コリトサウルス(ハドロサウルス)」がはっきりと写っていました。この書籍というのが『なぜなに世界の大怪獣』(1972年小学館発刊)という子供向けの図鑑のシリーズものの一つでした。当時の子供たちはその2重のインパクトに、怪物の存在を心に深く焼き付けたのでした。
以上のことを念頭にモンタナネッシーあるいはフラッドヘッド湖の怪物を調べてみました。するととんでもない事実がわかってきました。まず名前です。「ガー助」は明らかに日本語なので現地で使われていないことは想像に難くありません。普通なら現地で「スクリュー尾のガー助」を意味するような名前で呼ばれているのだろうと考えます。ところがそうした名前は私の調べた限り見つかりせんでした。あろうことか英語っぽい名前の「ハーキンマー」すら発見できませんでした。これはどういうことでしょうか。
真相は1962年に発刊された『SFマガジン9月号』(早川書房)に掲載された連載に基づくようです。斎藤守弘という方が書かれた『サイエンス・ノンフィクション』第10回「恐龍は現存する?」に「ガー助」の件が載っているそうです。海外の情報を手に入れる手段が貧弱であった当時、氏はなんとかこの怪物の情報を日本に広めようとしたのでしょう。その際にいくつかの勘違いや情報の交錯というのがあったのかもしれません。結果、「スクリュー尾のガー助」の記事が世に出たわけです。ちなみに「スクリュー尾」の元となった英語の「screw tail」というのは家畜やペットの尻尾の一つで、ブタの尻尾のように捻じれているものを意味します。また「ハーキンマー」という名前も氏が読んだ英語の記事のなかに、通称のような感じで載っていたようなので採用したということらしいです。
さらにあのインパクト抜群の例の「写真」ですが、最初からトリック写真であることがわかっています。この写真が掲載されたのはアメリカ合衆国の地方紙『ザ・スポークスマン-レビュー(THE SPOKESMAN-REVIEW)』1963年6月30日版です。この記事の中に写真の説明も載っています。その文章をそのまま載せましょう。「HERE ARE some photos conjured up by Mrs. Bill Nixon of Polson.」直訳すれば「ビル・ニクソン夫人によって作り上げられた写真をいくつか載せます。」となります。ここで大切なのは英文の「conjure(d)」/span>という単語です。私の手元にある『オックスフォード英英辞典』(旺文社) を引用すれば、「to do clever tricks such as making things seem to appear or disappear as if by magic.(あたかも魔術によって現れたり消えたりするように見えるように作られたもののような、よくできた悪戯や捏造を行うこと)」とあります。そう、トリック写真と承知の上で掲載していたのですね。
では実際のモンタナネッシーはどのような存在でしょう。ちょっと前段の説明が長くなりましたので、次回、その辺りを解説したいと思います。
【旅先】:フラットヘッド湖(アメリカ合衆国モンタナ州)
【交通アクセス】:羽田国際空港→シアトル・タマコ国際空港(アメリカ合衆国ワシントン州)→グレーシャーパーク国際空港(モンタナ州)→カリスペル→フラッドヘッド湖



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